安房直子の美味しそうな童話コレクション❹『ゆきひらの話』

安房直子の美味しそうな童話コレクション❹『ゆきひらの話』

「ゆきひら」とは、土で出来た茶色いお鍋のことです。

今日紹介するのはそんな「ゆきひら」、お鍋と風邪をひいたおばあさんのお話です。

 

たったひとりで寝込んでいるおばあさん

畑の中の一軒家に一人で暮らしているおばあさんが、ある日風邪をひいて寝ていました。

「こんな時に、誰かいてくれたらねえ。せめて、猫一匹でも、そばにいてくれたら、ずいぶんちがうんだけど……」

そんなことをぽつりと呟いたとき、台所の奥からコトコトと物音がしました。

誰か来たのかと思ったおばあさんが、「誰ですかー」と呼ぶと、

「ぼく、ゆきひらです」
そんな返事が返ってきました。

 

「ゆきひら」を人だと勘違いして…

「ゆきひらさん…はて」
おばあさんに、そんな名前の知り合いは、心当たりがありません。
(最初の時点では、「ゆきひら」が人間だと思っています)

「ええ、ぼくは、おなべのゆきひらです。ちょっと、ここのとだなを、あけてください」

おばあさんは、目をまんまるにしておどろきますが、言われるままゆきひらを出してやります。

童話の場合、物や動物が言葉を喋るシーンは良く出てきますし、主人公が人でないことももちろんよくあります。

なので動物や無生物がいきなり話出しても華麗にスルー、の作品の方が童話では多い気がします。

けれど、安房直子さんの作品ではわたしが読んだことのある中では、ほとんど人間が主人公です。

この「ゆきひらの話」はもちろん、鍋スカーフ、鹿、うさぎ、猫など、どのお話でもたいてい無生物か動物が喋り出します。

安房直子さんの作品では、それに対して人間の主人公たちは、わりと、ポカーンとしたり目をまんまるにしたりと、律儀に(?)驚いています(スルーの話も多いですが)。

主人公は大人から子供まで、老若男女さまざまですが、普段は「現実の読者たちと遠くない世界に暮らしている」という一貫性があるようです。
(ただ、全作品を読破した訳ではないので、時期によって変化はあるかも知れません)

 

 

りんごの甘煮を作ってくれるゆきひら

物言うゆきひらは、病気のおばあさんに

「どうですか、あったかいおかゆなんか」

「熱い野菜スープは、どうでしょう?」

と料理を作ってあげようと言いだします。

おばあさんは、つめたいものが食べたいと言うと、

「それなら、りんごの甘煮を作りましょう、それを、つめたくして、ごちそうしましょう」

とゆきひらは答えました。

とはいえ、ゆきひらは、りんごを薄く切って砂糖を入れる作業はおばあさんにさせます。

手足が付いてないので仕方がないですが。

 

おばあさんが、部屋にもどって寝ている間に、ゆきひら、かまどの上にとびのって、

「もえろ、もえろ」

と、言いました。すると、つめたいかまどに火がついて、ちょろちょろと燃えだしました。

「とろ火だ、とろ火だ」

と、ゆきひらがいいますと、かまどの火は、ちょうどいいとろ火になって、とろとろと燃えました。

なべの中のりんごは、やわらかくなりました。

白いお砂糖は、とけて、りんごの中にしみていきました。

ゆきひらのくちから、ふっふと、ゆげがのぼりました。

あまいりんごのにおいが、ゆっくりと、家の中に、ひろがっていきました。

「おばあさん…変わってくれ‼︎ 」と思いました。
冷まなくても美味しそうなりんごの甘煮が一丁あがりです。

 

ゆきひら鍋の名前の由来は?

ゆきひら鍋は「雪平」や「行平」と書くようです。

よく見かける名前の由来は、在原業平の兄、行平(ゆきひら)が、海女に海水から潮を汲ませて塩を焼いた故事に因む説です。

その時用いた平鍋には、白い塩が現れてきて、それが雪のように見えたそうな。

では、今日もこれから絵を描くので、この辺で。



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