安房直子の美味しそうな童話コレクション❷『黄色いスカーフ』

引き続き、安房直子さんが書く美味しそうな食べ物が出てくるお話を紹介していきたいと思います。

 

おばあさんの黄色いスカーフ

ある日、おばあさんが朝の新聞で「外出のときに大きな絹のスカーフを持っていると、とても便利」という記事を読みます。

風の強い時は頭にかぶってもいいし、寒いときには三角に折って肩にかけてもいいし、ちょっとしたパーティーのときに襟に巻いてもいい、だそうです。

頭にスカーフをかぶるというファッションに、時代を感じます。
(もしかしたら、数年後に流行ったりするかも知れませんが)

おばあさんは、この記事を見て「わたしもひとつためしてみようかしら」と、タンスから鮮やかな黄色の、絹のスカーフを取り出しました。

さっそく、おばあさんはスカーフを小さく折りたたんでハンドバッグの中に入れ、出かけることにします。

外に出ると風が吹いていて、おばあさんは記事で読んだとおり、スカーフを取り出して髪を包みます。

 

スカーフが似合わずがっかりしていると…

けれど、通りがかりのクリーニング屋のガラスに映った自分の姿を見てみると、おばあさんは慌てて黄色いスカーフをむしり取ってしまいました。

(これはまあ、どう考えたって派手すぎるわ。
頭にカナリヤ百羽のせて歩いてるみたいだ)

「年寄りは、ああ言う話を本気にしちゃいけないんだわ…」

そんな独りごとをつぶやきます。

その時!

丸めたスカーフを突っ込んだハンドバッグの中から、

「ひろげて、ひろげて」

と声が聞こえて来ます。
もちろん、ラジオなど持って来てはいません。

「ひろげて ひろげて
草の上に ひろげて
こんなに くしゃくしゃにされたんじゃ
息もつけない」

…と、謎の声(というか、明らかにスカーフ)がさらに
続きます。軽く怪奇現象です。

 

不思議なスカーフとごちそう

が、たった今まで恥ずかしくて暗くなっていたおばあさんの気持ちは、また明るくなりました。

怪奇現象に戸惑いながらも、
(そうだわ、スカーフのそういう使い方だってあるんだわ)
と思ったのです。

おばあさんは急いで近くの公園に入ると、大きな桜の木の下の芝生へ黄色いスカーフをきれいに広げて置いてやりました。

するとまたまた声がします。

「オレンジと、ホットケーキ」
おばあさんがまばたきした途端、黄色いスカーフの上に、黄色いオレンジと黄色いホットケーキが現れました。
「さあさあ、めしあがれ」
とスカーフがいいます。

こともあろうに「春の桜が咲いてる公園の芝生で、黄色いオレンジと黄色いホットケーキ」です。この本はさし絵のない文庫本なんですが、ただの活字を目で追っているだけでお腹が鳴りそうです。

もしこの話を子供の頃に読んでいたら、現実の何の変哲もない、喋らないおやつも召喚してくれないスカーフに軽くがっかりしていたと思うので、大人になってから読んでよかったです。

それはさておき、おばあさんがホットケーキとオレンジを食べ終わると、またスカーフが喋り出します…。
おばあさんとスカーフがどうなるか、ぜひ本を読んでみてください。



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