はじめて文明を見た南の島の酋長ツイアビが話したことー和田誠『絵本 パパラギ』

はじめて文明を見た南の島の酋長ツイアビが話したことー和田誠『絵本 パパラギ』

和田誠の絵が「落書きみたい」だと…

 

和田誠さんの絵が好きなんですが、家族など「特に絵に興味がない人」見せると「なんか私でも書けそうな絵」「落書きみたい」と散々なことを言われて(うわああん)と号泣します(心の中で)。

和田誠さんだけでなく、線が少ない絵を書く画家はよく言われることだと思います。

和田誠さんは超有名なイラストレーターなので、少しでも「絵の勉強をしている人」であれば「ぼくも好きだよ、やっぱり装丁がいいよね」とか「似顔絵がいいよね」などと言ってくれたり、とにかく悪いことを聞きません。

「全く同じ人のおんなじ絵を見せているのに、この反応の差は一体なんなのだ… 

まさかわたし、知らない間に宇宙人の陰謀とかで別の次元を行き来している…?」と妙な気分になります。

ひょっとしたら心の中で「何だこんな絵は、なんでこんな絵で有名になれるんだ、ちくしょう」とか思っているけど「でも、和田誠は有名な巨匠だからな…」などと、とりあえず合わせて褒めているんじゃないだろうかと疑心暗鬼になります。

…ただの妄想なので間に受けないでください。

 

「絵の勉強をしてる人」と「ふつうの人」は好きな絵の傾向が違うみたい

 

美術系の絵やデザインの勉強をしている人と言っても、学生くらいだと「ピカソの絵なんて普通の人は意味がわからないからダメだ‼︎」などと皆んなの前で堂々と言えたりしますが、年を経るにつれなんとなく言わなくなる感じがします。

ちなみに同級生だったわたしは、真面目に話を聞いているような顔をしながら、内心は(わたしは君の作品よりは、意味は不明でもピカソの絵の方が好きだよ、お前にピカソの一体何がわかるんだよ…)と白けていたので、ある時どこかで相手のそういう心の声が聞こえると言えなくなるのかも知れません。

人はネガティブなことを考えている時だけテレパシーを使えるようになり、よろしくない本音が伝わってしまう気がします。

 

和田誠が描く、絵本『パパラギ』

 

さて、そんな和田誠さんが絵を手がける『パパラギ』は、19世紀のヨーロッパ に、遠い南の島の首長ツイアビがはるばるやって来て、滞在の間感じたことを島に帰ってみんなに話した、という体裁で書かれています。

「パパラギ」とは、この本のなかでは西洋人のことを言っています。

そんな和田誠さんが…と書きつつ、一切なんの説明にもなっていないので補足します。和田誠さんはイラストレーター、エッイスト、映画監督です。

「 週刊文春の表紙の絵を書いてる人」というのが一番有名かも知れません。

 「ショートショートの神様」と言われる星新一著作の挿絵などを手掛けたり、他にも、星新一・ 丸谷才一の一連の作品や村上春樹の『 アフターダーク』、三谷幸喜や阿川佐和子作品の挿画などがよく知られていると思いますが、他にも数多くの装丁、挿絵を手掛けられています。

私が最初に出会った和田誠さんの装丁の本は、小学生のころに読書感想文を書くために勧められた「きまぐれロボット」だったと記憶しています。

小説家の嶽本野ばらさんがイラストレーターの特集記事で「和田誠の偉大さがわからない人はイラストレーターなど志すべきではない」と言っていた覚えがあります。(そりゃー言い過ぎじゃないかな…)と思いつつ、ズバッと言い切られるとハッキリと印象に残ります。

 

ツイアビ氏が島に帰って語ったことは…?

 

さて、本の内容はというと、南の島の首長のツイアビが、ヨーロッパで見聞きしたこと、感じたことを語っていくわけですが…

ツイアビ氏はたぶん、ヨーロッパの滞在に嫌気がさしてます。

パパラギの足はやわらかい皮とかたい皮で包まれている。

足皮はひもと金具でしっかりと足にしばりつけられている。

まるで、かたい殻の中にいる貝のようだ。

パパラギ はこの足皮を朝から夜までくっつけていて、そのまま旅にも行くし、踊りもする。スコールのあとのように暑いときも、脱がないのだ。

これはいかにもおかしなことだから、足は死にかけていて、いやな匂いがする。

良い話がなにひとつ出て来ません。

語ること全部が西洋社会の批判です。職業制度を批判し、新聞を批判し、貨幣制度を批判し、果ては布団で眠ることにすら文句をつけています。

読み終わる頃にはこちらも西洋社会の暮らし、つまりは、現代社会の自分の生活がイヤになっています。

今すぐにでも、意味があるのか不明な会議、大事な仕事のプレゼンも、サービス残業も、何もかも放り出して、行ったこともない南の島に帰りたくなっているはず。

今からほぼ100年も前に出版された本を元にした絵本ですが、古臭さはほとんど感じられません。今なお、私たち心にちくちくと刺さる一冊です。

ところで、「たぶん観光ツアーとか何にも無い時代のツイアビが、どういう経緯でヨーロッパへ滞在することになったのか?」 と疑問に思いました。

彼が身一つで旅行したとは考えづらいし、気になって調べてみたところ…

…と、その辺はネタバレになるので、いずれ別の場所で書きたいと思います。

では、これから絵を描くので、この辺で。



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