澁澤龍彦のおすすめ名作エッセイ。50の世界の奇妙なエピソード『東西不思議物語』

澁澤龍彦のおすすめ名作エッセイ。50の世界の奇妙なエピソード『東西不思議物語』

ヨーロッパだけでなく日本と
中国で起こった不思議な妖しい話、
奇妙で奇天烈な話をテーマに
書かれたエッセイ集。
その豊富な知識に驚かされる一冊。

澁澤龍彦氏は、西洋の歴史や文化に
見識の深い日本の小説家、
フランス文学者です。

『東西不思議物語』
澁澤龍彦 著

緻密ですこし怖い挿絵が魅力的

ほとんどの各章の末に、モノクロの挿絵が
添えられているのが嬉しいです。

このエッセイは連載されていたようなので、
たぶん新聞へ掲載された時の
挿絵を文庫本へも収録したのかと思います。

この挿絵を手掛けている画家の絵は、
わたしはまだ見たことが無いのですが
他に挿絵や装画を描かれた本があれば
そちらも見てみたい。

不思議物語の伝統は、歴史とともに、古代から脈々と流れていると言ってもよいであろう。

ヨーロッパにも日本にも、あるいは中国にもインドにも、私たちはその
伝統の流れを発見することができるし、その流れを現代に復活させて、これを新しい目で眺め、大いに驚いたり楽しんだりすることができるのだ。

と前書き(本の文章では
「前口上」と書いてあるのが古風)
で澁澤龍彦氏が語ります。

私は学者ではないから、七面倒くさい理屈をつけるのはあまり好きな方ではなく、ただ読者とともに、もっぱら驚いたり楽しんだりするために、五十篇に近い不思議物語をここに集めたにすぎないのである。

したがって、読者のほうでも、あまり肩肱を張らずに、私とともに驚いたり楽しんだりして下さればそれで結構なのである。

それにしても、不思議を楽しむ精神とは、いったい何であろうか。おそらく、いつまでも若々しさを失わない精神の別名ではなかろうか。

驚いたり楽しんだりすることができるのも一つの能力であり、これには独特な技術が必要なのだということを、私はここで強調しておきたい。

ルターが出会った悪魔のエピソード

この本のエピソードをすこしだけ
ご紹介してみようと思います。

ワルトブルクという
にあるお城の部屋に、
今でも瓶に入った黒いインクを
ぶちまけた跡が残っています。

実はこのインクの跡は、
学生時代に歴史の授業で習う
宗教改革で免罪符を焼き払った
ルターが、インク瓶を投げつけて
出来たものだそうです。

どうして瓶なんか投げつけたのか?

彼が聖書の翻訳をしていると、
悪魔があらわれ、うるさく邪魔をするので
思わずカッとなり、
「やかましい!!」
と、投げつけたらしいです。

ただの伝説でしょ〜 と思われるけれど、
少なくともルター本人は大真面目に
悪魔の存在を頑なに信じていたようで
実際、彼の膨大な著作の中には
自分が悪魔に出会った話が
よく書かれているとのこと…

このエピソードは「悪魔と修道士のこと」
という章で語られる一部。
澁澤龍彦氏は本当に博学で、豊富な
文献を元にひとつのエッセイを書かれます。
なので、ひとつの章で2〜3ほど関連する
エピソードを読むことができるのですが
長すぎず、短すぎず、ちょっと息抜きしたい
とき、好きな箇所から読んでいける一冊。

それでは、今日もこれから絵を描くので、この辺で。



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