アンデルセン『絵のない絵本』全話の解説とあらすじ❻《第18夜〜第19夜》

アンデルセン『絵のない絵本』全話の解説とあらすじ❻《第18夜〜第19夜》

各記事文頭のコード

全33話もくじ一覧はこちら

 

『絵のない絵本』のさし絵入り本5選

『絵のない絵本』モチーフにしたアクセサリー

 

《第18夜》都市の幽霊

月は「都市の幽霊」という、珍しい町のことを語ります。と言っても、第12夜で出てきたポンペイのように、遺跡となった町のことではありません。

作中では、この章の最後まで読むと町の名前が出てきます。

有名な町なのですが、この章を初見でどの町か分かった人はすごい! と思います。

アンデルセンは1834年にこの町を訪れ、その町の印象を手紙の中にこう書いています。

「私はこの町では少しも愉快に感じませんでした。ゴンドラはみな黒い布で覆われていて、まるで霊柩車そっくりです。

街全体が私には死骸のように、湖上に浮かんでいる死んだ白鳥のように思われました。」

ゴンドラ?
運河で荷物を運んだり、交通に使う底の平らな船ですね。

ゴンドラがある有名な町といえば…
ベニスの町です。

上の手紙はベニスに滞在した時の、アンデルセンの感想です。

ええ、今も観光で人気なベニスの感想とは思えない…。

ベニスの町はアンデルセンが訪れた時期、オーストリアに支配され、それに反抗する意味でゴンドラを黒く塗っていました。

あまり居心地が良くなかったのは、そのせいでしょうか?

また、絵のない絵本の中では「溜め息橋」近くの「鉛の部屋」から
深い井戸の底から響くような溜め息が聞こえる、との描写もあります。

「溜め息橋」はベニスの宮殿の裏から狭い運河を越え対岸の牢獄に通じるアーチ形の橋のこと。

裁判官から有罪宣告を受け、この橋を渡ると二度と帰れない、ということからこの名が付きました。

「鉛の部屋」はベニス総督の屋敷にあった鉛の屋根の牢屋を指します。
アンデルセンが見たのは暗い時代ベニスだったのかもしれません。

「お城みたいな教会」と描写されているサン・マルコ聖堂も出てきます。

古いベニスの祭りの記述もあり、私は初めて読んだとき何のことか分かりませんでした。

毎年キリスト昇天祭の日、ベニスの太守が軍船ポセントロでアドリア海に乗り出し婚約指輪を投げ込みます。

これでベニスの街とアドリア海の結婚が成立し、お互い助け合う関係になると言われました。

《第19夜》舞台を追われた若い俳優

ある新人俳優の話。

大勢の観客で埋まっている大きな劇場で、新しい俳優が初めての舞台に立ちました。

しかも主役の騎士の役です。

しかし、彼は舞台袖に下がると窓ガラスにひたいを擦りつけて涙していました。

というのも、彼の演技が下手で観客は口笛を吹き鳴らし俳優をやじり通したからでした。

新しい俳優は、舞台を追われてしまいます。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です