ヨーロッパ旅行記で一番おすすめ『河童が覗いたヨーロッパ』

ヨーロッパ旅行記で一番おすすめ『河童が覗いたヨーロッパ』

川辺に住んでいてキュウリが好きな妖怪の旅行記、ではありません。
舞台芸術家の妹尾河童さんのヨーロッパ旅行記を紹介します。
舞台芸術家という肩書きより、『少年H』の 著者という方が有名かもしれません。

一年間にわたるヨーロッパの旅行でスケッチした、景色のイラストが多数収録されています。
妹尾河童さんが旅行中に感じたことを書いた手書き文字の文章をはじめ、実際に現地のひとに片言の言葉で質問したときに描いたイラストも。

とりわけ、宿泊したホテルの間取りを全て記録されており、部屋の内装のスケッチが半数くらいです。
イラストはすべてモノクロでカラーページはありません。

「ピサの斜塔には、なぜ手すりがないのか?」とノートに描いた絵と片言のイタリア語で現地のイタリア人に聞いたり、パリのスイングドアを通る人々を観察したり、国境を越えて走る列車でそれぞれの国の車掌さんをスケッチしたり。
妹尾河童さんの興味と好奇心おもむくまま描かれたスケッチが魅力的な旅日記となっています。

「河童が覗いた」のシリーズは他にも『河童が覗いたインド』『河童が覗いたニッポン』などが出ています。

実はいちばん最初に出た『河童が覗いたヨーロッパ』に続く『河童が覗いたインド』『河童が覗いたニッポン』の方が、イラストが細密に書かれていて、エッセイも多くより濃密な内容になっています。
(『河童が覗いたニッポン』は旅行記ではなく、妹尾河童さんが興味のある場所や物事を取材したものです。)

けれど、「シリーズのなかでどの本がいちばん好きか?」ともし聞かれたら、あくまで個人の好みではありますが断然『河童が覗いたヨーロッパ』を選びます。

このヨーロッパ旅行のスケッチや文章は、実は本にするつもりはなく、親しい友人に見せるようなつもりで旅行中に書き留められたものだそうです。それを人に勧められて出版されたとのこと。
序文にもそのことを「いいわけのまえがき」と称して触れています。

同じく旅行記の『河童が覗いたインド』では、よりイラストが細密で丁寧になっていますが、あまりに絵が上手すぎて「旅行中のスケッチ」に見えません(旅行中に描かれたのかもしれませんが…)。凝った絵が多く、見応えがあります。
こちらの本はもともと雑誌に連載されていたとのことなので、そのせいもあるかもしれません。

ただ、文字の大きさは『河童が覗いたヨーロッパ』に比べてかなり小さいので文庫本ではやや読みづらく、文章も長く感じます。

対して『河童が覗いたヨーロッパ』での絵は、のびのびとして開放的な雰囲気をまとっています(とはいっても、それでもスケッチの絵などかなり細かく書かれています)。 手書きの文字も大きめで読みやすいです。

ローマのホテルで、泊まった部屋の俯瞰図(間取り図)スケッチの傍らに、手書き文字でこんな一文が…

ロケンティー君が「シニョーレ・カッパは天井へのぼらないでどうしてこんな絵が描けるんだ?」と、本気で不思議がる。

「だれもいないときに部屋の中を飛びまわってるのさ」
といったら、すかさず
「内緒で、ぼくにも飛び方を教えろ」
と片目をつぶる。

こんなふうにはしがきのように書かれたひとことが楽しかったり。
読んでいるこちらも旅行中の友達から届いた手紙を読んでいるような、のんびりとした気分を味わえる一冊です。



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