大人におすすめの猫の絵本。森博嗣&佐久間真人『猫の建築家』

大人におすすめの猫の絵本。森博嗣&佐久間真人『猫の建築家』

皆さんは子どもの頃読んだ絵本は覚えていますか? 絵本というと子ども向けものが大半だと思いますが、少ないながら大人向けの絵本もあります。

大人になってから読む絵本も良いもので、もっと増えて欲しいなと思っています。大人向けの絵本はテキストの分量が多く、内容も凝ったものが多いのでお得だと思います。

というわけで、今日は大人向けの静謐な絵本を紹介したいと思います。
簡潔で哲学的な文章と、どこかノスタルジックな街を緻密に描いた絵が素敵な『猫の建築家』です。

光文社文庫 『猫の建築家』佐久間真人 画、森 博嗣 作

常にどういうものを建てるべきか考えている「猫の建築家」が、思索を巡らせながら街を歩きます。この猫は、挿絵の外見は4足歩行の普通の野良猫ですが、生まれながらの建築家らしいです。

彼の一日は、覗き口から外界を眺めることで始まる。

夢の中でさえ、なにを造ろうか、
どう造ろうか、と考えていたので、
目が覚めると、すぐにでも適当な土地を
探しにいきたくなるのだ。

しかし、目的もなくむやみに出歩いたりはしなかった。

まず、「思慮」が必要であることを猫は知っている。

思いを巡らしながら街を観察する猫は、やがていつも鍵を握る言葉を思い出します。

理由もなく形が造られ、機能もなく存在するものは、
おそらくこの世界にない。

ただ、造られたままの形ではなく、
造られたときの機能を果たせなくなったものが、
幾つか残っているだけだ。

残っている多くのものは、すでに動かない。形は少しずつ崩れていく。

「しかし、何故、残っているのだろう?」
「どうしてすぐに消えてしまわないのだろうか?」

そう考えるとき、猫はいつも「美」という理由を思い出す。

「そう、聞いたことのある言葉だ」

だが、まだその意味を、誰も明らかにしていなかった。

猫は「美」について、建築家仲間の猫たちと議論したり、思考にふけりながら街を巡ります。
街の風景はアパートやビル、その中のエレベーター、線路、地下鉄への入り口、打ち捨てられた電車の廃墟など、見慣れたどこか懐かしい景色がつづきます。しかし、人物の姿はひとつもなく、街に居るのは猫たちばかり。

なぜ街に人が居ないのか、文章の中でも特に説明はされません。寂れて人が居なくなった街に、野良猫たちだけが残って暮らしているような印象を受けます。
そのわりに室内は荒れていないので、私は宇宙人の超科学によってある日突然人類が街から消えた説を推します(適当)。

本文の傍には、何故か英訳文も添えられています。文庫本とハードカバーの本が両方出ていますが、佐久間氏の絵が素晴らしいので断然ハードカバーをおすすめします。(と書いておきながら何ですが、わたしが持っているのはすぐ手に入りやすい文庫版…)

9年を経て森博嗣氏と佐久間真人氏のタッグによる、の2冊目の続編『失われた猫』が出ています。



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